「んっ、ん、ぁ、っ」

太宰は抱っこされ乍ら自分の指に奉仕をするを見て、赤ん坊みたいだなと思った。暫くその様子を眺めてから「もういいよ。良く出来ました」と今度は自分の指での口内を苛めてやると、は先程よりも一層甘い声を洩らした。は随分とこれが気に入ったらしい。太宰は、器用に中指と薬指での舌を挟み乍ら、人差し指で上顎を擦る。

あの日、太宰がの通う店に店員として潜入した日、から得た僅かな情報で翌日見事犯人捕獲に成功。薬物売買の噂は本当だったらしく、例の男を軍警に引き渡し、店のオーナーにもそれはそれは感謝された。同時に太宰は店に潜入する必要はもう無くなった為、ここ暫く店の近くを通ることも無かった。はといえば、あの日太宰から貰った快感が忘れられず、三日経たずとも店に足を運んだ。だが、当然其処に太宰は居なかった。店側に訊くもその日は休みだと云われて終わった。しかし明くる日もそのまた明くる日も同じことを云われ、怪しいと思っただったが、店側にも太宰にも何か都合があるのだろう、と言及はせずその日はいつも指名する店員と一夜を過ごした。

そして、今日は仕事の帰りに偶然太宰を見掛けた。後ろから見たときは人違いかと思ったが、曲がり角で横顔を見た瞬間、慌てて駆け寄り、近付いた太宰の外套の裾を掴んだ。太宰は一瞬驚いて「ちゃん」と呼んだ。それだけではどうしようもなく気持ちが良くて満たされていく感覚がした。「太宰さん」と熱の籠った瞳で見詰められた太宰は、の手を取り「場所を移そう」と歩き出した。道すがらに太宰は凡てを話し、からの情報のおかげだと感謝を述べた。はだから店側もああいう対応だったのか、と一人納得し、事件が解決したなら良かったと伝えた。太宰はその言葉に「だからご褒美をあげる」と、ホテルへとを連れて来た。そして今に至る。

「ぁ、ふぁ、んぅ……」
「ふふ、気持ち良さそうだね」
「ん、」

は既にSubspaceに入っていた。あの日のようにとろけた瞳で太宰を見詰め、太宰からの命令とご褒美が、どうしようもなく気持ち良かった。もっと欲しい、もっと気持ち良くなりたい、その気持ちが先走りは太宰の指に歯を立ててしまった。小さくだがガリ、と厭な音が響く。

「痛いなぁ」

太宰が微笑み乍ら指を引き抜いた。は「ぁ、ごめ、ごめんなさい」と泣きそうになり乍ら口にする。はお仕置きを好まないSubだけれど、太宰は基本的に凡ての傾向が強いDomだ。あの日は潜入する為「褒めるのが好き」という設定だったが、それも間違いでは無い。太宰は実のところ、お仕置きをされたがどんな反応をするのか気になっていた。あの日は仕事の為で、下手なことをすれば情報を聞き出すどころか、店に潜入することすら出来なくなる可能性があったから我慢したのだ。Subに危害を加えたとあの店のオーナーが知れば、仮令依頼人であったとしても太宰の出入りを禁じるだろう。そんなオーナーだからこそ、あの店は「Subの為の店」としてうまくいっているのだ。

「噛むなんて駄目じゃあないか。悪い子にはお仕置きしないとね」

それを聞いた途端、は「ぅ、ごめ、なさい、ごめ、」と先程とは比べ物にならないくらい顔を青褪めさせて、浅い呼吸を繰り返した。ドロップしかけているその様子に太宰はオーナーの「扱い難い」と云う言葉を思い出す。勿論痛いことも酷いこともする心算は無いが、今迄のSubたちとは違うその反応を、太宰は興味深く見ていた。今迄相手にしたSubたちは皆、謝りはするが同時にどんなお仕置きをされるのだろう、と期待する目を向けてくる者が大半だった。のように、心底怯えた顔を見たのは初めてで、太宰は加虐心が煽られていく。あの日から思っていたが、矢張り相性が良いのだ、故にここで下手なことをして逃したくないと太宰は考える。

「だぁいじょうぶ、痛いことはしないよ」

そう云う太宰を訝し気に見る。「そうだなぁ」と考える太宰に、はびくびくと怯えていた。そんなを見て、益々満たされる太宰。ほんの数分考えてからの耳を撫で、「耳だけで気持ち良くなってみようか」と笑った。が如何いう意味だと訊くよりもはやく、の耳朶に太宰の舌が触れた。

「んっ」

耳朶を甘噛みされて、舌で嬲られる。舌が耳の穴に這入り、くちゅり、と情事の最中を思い出させるような音が頭に響いて、は顔を真っ赤に染めた。必死に太宰から離れようとするけれど、太宰に抱っこされているに逃げる術は無かった。

「んんっ、や、あっ」
「んふふ、かぁわいい」

太宰はそう耳元で囁いて、また舌を這わせる。は恥ずかしいのに、気持ちが良くて、何も考えられなくなってくる。お仕置きって、こんなに気持ちが良いのか、と普段のなら絶対に思わないことを考えてしまうほどには、の頭は回っていなかった。そう思わせてしまえるのもまた太宰の力量に拠るものだった。そんなに気付いた太宰は一度唇を離して、に命令する。

「ほら、“イってみせて”」

太宰が再度耳に舌を這わせる。は太宰からの命令と耳に与えられる刺激に、気持ちが良くなって、「あ、あぁっ」と今日一番甘い声を響かせ乍ら身体を跳ねさせた。太宰は「良く出来ました。いい子」との頭を撫でる。はそれに気持ち良さそうに目を閉じた。太宰はそんなを見詰め乍ら、如何したらを飼えるか、考えていた。

ビターナイト