「お、治、さん」

未だ呼び慣れない太宰の名前を、太宰から目を逸らし乍ら云うに、太宰は「“こっち見て”」と命令した。太宰の隣に座ったは命令通り太宰を見上げる。呼び慣れない所為か、は羞恥に顔を赤く染めていた。異性の名前を呼ぶのに抵抗があるわけではない。相手が太宰だから恥ずかしいのだ。心の底から好きだから、特別だから、大切だから。好きな人の名前を呼ぶのは緊張する、いつだって。

「“もう一度私の名前を呼んで”」
「……治さん」
「もう一度」
「治さん」
「うふふ、なあに、ちゃん」

太宰だって悪い気はしない。むしろの口から自身の名が紡がれるのは大歓迎だ。しかもそれが常時ではなく、「太宰と二人きりのときだけ」なら尚更。いじらしくて可愛い、のそういうところも太宰は気に入っている。

「太宰さんが呼べって云うから……!」
「戻ってる戻ってる」
「ぅ……治さん」
「はい、よくできました」

「ご褒美だよ」との顎を掬った太宰は、そのままに口付ける。太宰は啄むように接吻をした後、薄く口を開いたに待ってましたと云わんばかりに舌を差し込んだ。

「あ、っ……ふぁ、……ん、だ、ざいさっ」
「ん……、違うでしょ」
「ぁ、っ、お、治さ、んんっ」
「いい子」

ぐちゅぐちゅと口内を犯されて、の頭はぼうっとしてくる。今日はそれ程命令されていない。けれど太宰との接吻が気持ち良くて、命令されたときみたいにの頭はぼうっとしていた。とろんとした瞳で太宰を見詰めるを、太宰は可愛いなぁと思い乍らその頭を撫でた。
太宰は自身の名前なんて呼ばれ慣れている。けれどに呼ばれるととても心地が良くて、をパートナーに選んだ自身を心中で褒めた。

その後のこと