武装探偵社と書かれた扉の前で深呼吸を繰り返す。この扉の向こうに敦くんがいる。仕事してるのかな。どんな事してるんだろう。外で仕事をしている敦くんしか見たことが無いから、何だかドキドキしてきた。敦くんびっくりするかなぁ。
事の始まりは今朝のことだった。暇が出来たお姐様こと尾崎紅葉さんが「女子会をしよう」と提案してきたのだ。因みに私たちの間では女子会とお茶会は同義だ。私も急ぎの仕事は無いし、それに了承した。樋口ちゃんを誘おうと思ったが仕事で出ていて捕まらなかった。しかし人数は多いほうが楽しい。如何したものかと悩んでいるとき、お姐様が折角だから鏡花ちゃんを呼ぼうと云ったのだ。
そして私が探偵社まで迎えに来た。きちんと三回ノックをして、そしたら学生服のかわいらしい女の子、ナオミちゃんが出迎えてくれたので、私は用件を云った。

「こんにちは!敦くんいますか!」

此処にお姐様が居たら怒られているだろう。しかし今此処には居ないのだ。今頃お茶会の準備をしている筈だ。お姐様の用意するお茶とお菓子はいつも一級品で格別に美味しい。今日は何が出るか楽しみだな。

「えっと……とりあえずどうぞ」

ナオミちゃんは私を中に入れてくれた。堂々と正面から来ておいてあれだけど、仮にも私は敵組織の人間だぞ。ナオミちゃんだって私のことを知っている筈だ。何せここには私のことを知り尽くした憎き太宰がいるのだから。探偵社意外とゆるいな。まあ門前払いされないから良いのだけど。

「……何しに来たんですか」
「あっあーつーしーくーん!!久しぶり!三日ぶりかな?何だかすごく長い間会っていないような気がする!三日ぶりでも敦くんはかわいいねぇ!」
「毎回毎回抱き着くのやめてください!」
「照れてるの?かわいいね!」

はあ〜〜〜。今日もかわいい。あっ敦くん離れちゃった。流石男の子。力が強いね。

「おや、その声はちゃんじゃないか」
「あ、そうそう敦くん。今からマフィアでお茶会やるんだけどね、鏡花ちゃんと一緒においでよ」
ちゃん私のこと無視するのヤメテ」
「何よ太宰はお呼びじゃないのよ」
「……」
「あっ敦くん無言で逃げようとしないで!ね、一緒にお茶するだけだから!」
「ポートマフィアにそう易々と行くわけないですし太宰さんだって止めるに決まって」
「行ってきたらいいじゃないか。鏡花ちゃんも一緒に」
「え?!」
「姐さんとのお茶会だろう?あそこで出る茶菓子美味しいのだよねぇ」
「太宰呼んでないのに勝手に参加してたわよね」
「だって茶菓子が美味しいんだもの」
「だ、太宰さん!良いんですか?!ポートマフィアに行くんですよ?!何かあったら……!」
「落ち着き給え。何も起こらないよ。それどころか一級品の茶と茶菓子をご馳走になれる」
「でも……」
「もうすぐ鏡花ちゃんも戻ってくる頃だし。姐さんが鏡花ちゃんに会いたがっているんだろう?」
「そうよ。私も鏡花ちゃんに会いたいし。ね、敦くん、行こうよー!」
「……、……はぁ。すぐに帰りますからね」

やった!敦くんとお茶会だ!お姐様への言い訳は後で考えよう。
その後太宰の云う通り戻ってきた鏡花ちゃんは、お姐様の女子会で出されるお菓子がどんなものか知っているので「お茶するくらいなら」と快く了承してくれた。よし任務終了。帰ってお茶会だ!




「何故その童がおるのじゃ」
「これには海よりも深い事情があるのですよお姐様」
、私は鏡花を連れてくるようにと云ったはずじゃが」
「連れてきたじゃないですか!ほら!」
「……甘い匂いがする」
「愛いのう、鏡花。菓子をたくさん用意したんじゃ。たんとお食べ」
「……あの……」
「何じゃ人虎。何故女子会におるのじゃ」
「僕は彼女に無理矢理連れて来られたんです!」
「鏡花ちゃん迎えに行ったら敦くんも居たからついでに連れてきちゃった!」
よ……女子会の意味を判っておるのかえ?」
「判ってます!判ってるから!敦くんに夜叉の刃を向けないで!」
「では何故連れてきた」
「……だって、敦くん見たらつい。ね、お姐様。今日だけ敦くんもいいでしょ?ね?」
「…………今日だけじゃ」
「わーい!ありがとうお姐様!あっ敦くん何食べる?クッキー?マカロン?大福もあるよ!」
「要りません」
「そんな冷たいこと云わないで食べましょう!」
「……これ、美味しい」
「鏡花ちゃん敵組織で出されたものをそう易々と口にするのは……」
「美味しい」
「アッハイ」
「ね、鏡花ちゃんも楽しんでいるようだし。あ、毒なんて入れてないから安心して!」
「……僕は不本意ですからね」
「などと云いつつ席に着くあたり、お主もが気に入っているので?」
「莫迦なこと云わないでください!僕はこんなお茶会不本意だし、席に着いたのは鏡花ちゃんに万が一何かあったときのためで!」
よ、お主の想い人は元気よのう」
「うふふ可愛いでしょう」
「マカロン……美味しい……」
「ほらほら敦くんも、あーん」
「……要りません」
「敦はマカロンより大福のほうが好き」
「そうなの?はいじゃあ大福、あーん」
「自分で!食べます!」
「あーん」
「だから自分で!」
「小僧、諦めろ。は好きな奴には尽くすタイプじゃ」
「これは尽くすとかそういうことではないのでは……?」

もうお姐様ったら!恥ずかしいんだから。まあその通りなんだけど。私、好きな人には尽くすタイプだ。そりゃもうとびっきり甘やかすし、何でも与えてあげるし、何でもしてあげたくなっちゃう。敦くんみたいなかわいい子なら余計に。

「一緒に暮らしたらこうやって毎日私がご飯食べさせてあげるからね」
「暮らしません!」
……私は茶会に参加することは許したが其奴との交際を許した覚えはないぞ」
「え〜お姐様の許可がいるのかぁ……首領には近々云おうと思ってたんだけど」
「付き合ってません!僕は貴女のことなんて好きじゃないんです!」
「貴方、と恋仲だったの?」
「鏡花ちゃんまで……!違うからね?!恋仲なんかじゃないからね?!」
「恋仲なんか……ってことはそれ以上の深い関係だと思ってくれてたのね?!」
「話聞けよ!!!」

お茶会しよう!