「手前ちゃんとレシピ見てんのか?!」
こんにちは、泣く子も黙るポートマフィアのです。私の横で怒鳴っているのは、そんなマフィアの幹部、中原中也だ。私は震えっぱなしだ。だって中也こわい。
「いいか、菓子作りっつうのは、どっかでひとつでも間違えたら上手くいかねぇんだよ」
「はい……」
「手前の目の前にあるレシピには何て書いてある?」
「……ボウルに入れたものを、よく混ぜる」
「混ぜたか?」
「……混ぜた」
「何で?」
「えっ……と、……お箸で?」
「あんだろ!そこに!泡だて器が!箸でよく混ぜられるわけねぇだろ阿呆!」
「うぇぇん中也こわい……」
「泣いてねぇでレシピを見ろ手を動かせ」
流石マフィアの幹部、滅茶苦茶こわい。すごい睨まれてる。兎に角手を動かさないと、また怒鳴られてしまう。そう思ってレシピ通りよく混ぜていたら、その混ぜていたものに変化があった。
「……中也先生」
「んだよ」
「これって緑色になるものなんですか?」
中也が絶句した。
「なんっで緑色になんだよ?!何入れやがった?!」
「何にも入れてない!中也そこで見てたじゃん!」
「…………何で緑色になるんだよ……」
心底不可解だという顔をしている。私だって不可解だ。そういえば以前、朝餉を作ろうとしたらキッチンが爆発したっけ。何を作ろうとしたかは爆発の衝撃で忘れてしまった。あと、お鍋を作ろうとしたら何故か真っ黒になったこともあったな。変なもの入れてないのに。一口食べたら意外といけたので完食したら次の日酷い腹痛に襲われたっけ……。他にもいろいろとやらかしたことがあるけど忘れた。それからというもの、私は料理をしなくなった。しない、というか、出来ないのだ。料理が。何故か。そんな私なので、今日は料理上手な中也にお菓子作りを学ぼうと、こうして中也のお家までやってきて、指導を受けているのだ。
「はぁ……これじゃあ敦くんに食べて貰えないなぁ……」
先日のお茶会で、お菓子を美味しそうに食べていたから、作ってあげたら喜ぶかなと思ったんだけどな。決して太宰に云われた「そんなんじゃ胃袋掴めないよ」を根に持ってるわけじゃない。
「彼奴にやる心算だったのか?」
「うん」
「受け取って貰えんのか?」
「うっ……それは……どうにか……がんばる……」
「どうにかって……。まぁ、それよりこれを完成させるのが先か……」
そう云って私からボウルを奪い緑色の物体を眺めながら「ほんとにどうやったらこうなんだよ……」と呟いていた。それから新しいボウルを出して、材料を量ってくれる中也は、何だかんだ優しい。これは余談だが、マフィア内には中也の部下になりたいと望む者が結構いる。
「出来たー!」
あれからまた怒鳴られながら、どうにかこうにか完成した。途中々々中也に「見てらんねぇ!貸せ!」ってボウルを奪われたり、生地をこねるときも中也がやってくれたりしたけど。
「私、クッキーをちゃんとここまで作れたの初めて」
「殆ど俺がやったけどな」
「うっ……まぁ、そうだけど……ちゃんと出来たからいいや。見た目も味も完璧だね!」
「」
「何でしょう中也先生」
「その完璧な見た目について訊きてぇんだが、こりゃ何だ?」
「……ら」
「あぁ?」
「……とら……です……」
「これ虎だったのかよ?!どっからどう見てもキリンさんだろ!」
「中也、キリンさんって云うのかわいいね」
「五月蠅ぇ!クマさんとかウサギさんとかの型あっただろ!何で手前は真面にクッキーを作ったこともないのに型がねぇ形を作ってんだよ」
「いやぁ……いけるかなって……」
「……はぁ……疲れた……味に問題ねぇしもういいだろ……。それ今から人虎に渡しに行くんだろ。さっさと行ってこい」
「うん。ありがとう。中也の何だかんだ優しいところ好きよ。今度美味しいお酒ご馳走するね」
「はいはい。まぁ、精々頑張れよ」
とびっきり美味しいお酒、探しておかないと。
「敦くん!お疲れ様!今帰り?私も一緒に帰っていい?」
「ぅわ、何で居るんですか何しに来たんですか」
「今うわって云った?ちゃん傷付いちゃうなぁ」
「何しに来たんですか?」
「あれ無視?そういう冷たいところも好き。あのね、今日は敦くんにお菓子を持ってきたの、じゃーん!」
「…………要りません」
「えっ……クッキー嫌い?お茶会でクッキーも食べてたから大丈夫かなって思ったんだけど……。流石に大福は作れないから無難にクッキーにしたのに……」
「そういうことじゃなくて!敵組織の人から貰えるわけないでしょう?!」
「変なもの入ってないよ!本当にただ、食べて欲しくて作ったんだけどな……」
作ったのは中也だけど。
「そっ、そんな顔したって駄目です……!」
「……どうしても駄目?要らない?」
「っ……っ…………本当に、変なもの入ってないんですね?」
「!……入ってない!ほんとに!ただのクッキー!」
「まぁ……食べ物に罪はありませんから……」
「ありがとう!敦くんのためならいつでも作るからね!」
「もう結構です。……それより、これは……」
「あぁそれ?何に見える?」
「えっ……えぇ……キリンさん……?」
「キリンさんって云う敦くん可愛い!!ボイスレコーダー持ってきて良かった。残念!それはね、虎!敦くんの異能力に因んで虎にしてみました〜!」
「これが?!どこからどう見てもキリンさんじゃないですか!ていうかボイスレコーダーって何ですか?!」
「あっうっかり口が滑っちゃった。じゃあ今日はこれで。また明日ね!バイバイ!」
「あっちょっと待っ……はやい……はぁ……あの人何で僕のこと好きなんだろ…………」
レッツクッキング!