こんにちは、最近部屋のソファが虎のぬいぐるみで埋まっているです。ぬいぐるみの殆どは暇潰しに寄ったゲームセンターにあったUFOキャッチャーの景品。だってかわいいんだもの。敦くんみたいで。敦くんが狭い箱の中にぎゅうぎゅう詰めにされてると思ったら興奮……間違えた。可哀想で!救出したくなって取れるだけ取ったらソファが埋まってしまった。幸せ。因みにそのゲームセンターは出禁にされた。そしてその帰りに寄ったショッピングモールで、私は運命的な出会いをしてしまったのだ。そろそろ新しい化粧品が欲しいなといろいろ見ていたら、なんと、虎の絵が描かれたコンパクトを見つけてしまったのだ!これはもう購うしかない。即購った。他にもいろいろ購い揃えたところで、私は名案を思い付いたのだ。

今日はその名案を実行するため、やってきました探偵社。

「こんにちは!敦くんいますか!」
「いません帰ってください」
「敦くんが出迎えてくれるなんて!今日もかわいいね〜〜〜」
「敦くんはいません帰ってください」
「相変わらずつれないなァ。そんなところも好き!」
「……何しに来たんですか」
「敦くんに会いに」
「帰ってください」
「あとお願いがあって」
「絶対厭です」
「未だ何も云ってないのに」

敦くん越しに事務所を見たがどうやら皆出払っているらしい。静かだ。そしてこれは敦くんと二人きりという何とも好都合な展開だ。うふふ。

「……聞くだけ聞きます」
「お化粧して欲しいの!」

そう、名案とは、敦くんにお化粧をして貰うことだ。流石私、天才!

「絶対厭です」
「お給金出すよ」
「貴女からの施しなんて受けません!」
「電卓借りるね。んーっと、これくらい出すけど」
「……え」
「足りない?0もう一個、否……二個足そうか?」
「正気ですか?」
「正気だよ。敦くんにお化粧して貰うんだもん、このくらいは当然の額だと思うけど」
「……僕、女性に化粧なんてしたことないですよ」
「知ってる。私が教えるから。ね、お願い」

因みに、給料日前で敦くんのお財布がスッカラカンなことも知っている。

「……暇なだけですから」
「うん?」
「皆出払っていて、特にやる事も無くて、暇だから、貴女のお願いを聞くだけですからね!貴女を好きになった訳じゃないですからね!あとお金に目が眩んだ訳でもないですから!絶対!」
「うん、判ってるよ」

そうと決まれば早速準備だ!応接間を借りよう。テーブルに広げた化粧品の数々を興味津々に眺める敦くんかわいい!カメラ持ってくれば良かった。心のメモリーに焼き付けておこう。

「ではお願いします!えーっと先ずはその小さい瓶の液体を顔全体に付けて呉れる?」
「これですか?」
「そうそう、それ。化粧水」
「けしょうすい」

復唱してる!かわいい!

「敦くん、手、あったかいねぇ」
「……あんまり喋られるとやり辛いんですけど」
「そうだね。じゃあ何して欲しいか云うとき以外は黙ってるね」

はぁぁ。敦くんの顔が近い。かわいい。手があったかい。好き。かわいい。幸せ。

「これでいいですか?」
「うん!上出来!どんどんやってこ!次は乳液ね。同じように顔全体につけてね」
「にゅうえき」

かわいい!

「これでいいですか?」
「うん!じゃあ次は〜、下地!下地はその緑のやつ。虎が描いてある」
「したじ」
「敦くんかわいいねぇ〜〜〜」
「余計なこと喋ったら止めますよ」
「うふふごめんね。その下地も顔全体に、その中にあるパフでポンポンして呉れる?」
「ぱふ、で、ぽんぽん」

えっ滅茶苦茶かわいい。何で今日ボイスレコーダー持って来なかったの!私の莫迦! それから普通にアイメイクやら口紅やら一通りやって完成した。敦くんの手によって作られた私の顔!最高。


「わーい敦くんの手によって作られた顔だー!」
「僕なんかに、化粧して貰ってそんなに嬉しいですか?」
「勿論!大好きな敦くんがしてくれたんだもの」
「貴女のいつもの化粧より、下手くそですけど」
「そんなことないよ。丁寧に優しくやってくれたじゃない」

敦くんは私のこと、好きじゃないのに。敦くんのそういうところも、大好き。

「……貴女は、化粧なんて要らないと思いますけど」
「えぇ〜何それ何それどういう意味?化粧なんて要らないくらい美人ってこと?」
「…………整った顔だなと、思います。肌だって、そんな、いろんなものを塗って隠す必要が、判りません」
「うふふありがとう。嬉しい。……私、これからお仕事でお金持ちの男の相手するのよ」
「そうですか」
「好きでも無い男に、本当の自分なんて見せたくないのよ」

敦くんは「そうですか」と云っただけだった。これは多分判っていないな。まぁそんな敦くんもかわいいから良いのだけど。

「敦くんにお化粧してもらえて本当に嬉しい。ありがとう。またお願いね」
「またなんてありません!」
「そんなつれない敦くんも好き。かわいい!」

あっ敦くん自分の机に戻っちゃった。私もそろそろ行かないと。「あ、最後にひとつだけ」と敦くんを見たら、敦くんは「今度は何ですか!」と怒っていた。かわいいなぁ。

「女にはね、隠しておきたいものがたくさんあるのよ」

やさしく触れてね