※ラナウェイの「ねなしぐさ」の夢主ちゃんをお借りしています。
ご機嫌麗しゅう、です。世間はクリスマス。浮足立った人間たちを眺めながら、私は敦くんへのクリスマスプレゼントに頭を悩ませていた。何が良いかなあと街を歩いていたけれど、なかなかしっくりくるものがなかった。何でも与えてあげたいけど、マフラーとか手袋とか形に残るものは受け取ってくれなさそうだし、やっぱり食べ物が良いかな。それならやっぱり手作りじゃないかと思い立ち、作ることにしたのだ。そう、ブッシュドノエルってやつを。
「と!」
「伊万里の!」
「「三分クッキング〜!」」
と、いうわけで今回は助手がいます!伊万里やしろちゃんです。この掛け声には特に意味はありません。伊万里ちゃんはエリスちゃんのお友達で、私が調理場でブッシュドノエル(とは言い難い紫色のどろどろした物体)を爆発させたとき、偶然通り掛かった伊万里ちゃんに「お姉ちゃん何やってるの?」と訊かれたので、そのまま調理場に引きずり込んで手伝って貰うことにした。爆発物の後処理はきちんとやった。
ちなみに中也は今日は仕事なので、事前にレシピだけ聞いておいた。中也は「何で手前はろくに出来ねぇくせにそういう難易度の高いものを……」とか何とか云ってたけど、丁寧に書いてくれた。今回はウサギのイラスト付き。こんなに丁寧に書かれているのだ。これで失敗したら莫迦だろう。幾度も料理を失敗している私といえど、流石にこれで失敗するなんてことはない。
「でもお姉ちゃんさっき爆発させてたよ」
「爆発したら消滅するからあれは一回にはならないのよ」
「そうなんだ!じゃあお姉ちゃんは今から初めて作るんだね」
「そういうこと」
もしかしたら、万が一、億が一にも失敗するかもしれないと思って材料は多めに購っておいたのだ。余ったら中也に何か作って貰えば良いし。いや失敗なんてしてないけど。私は今から初めてブッシュドノエルを作るんだけど。
「よしじゃあ早速やっていきましょう」
「はーい!」
「えーっと……じゃあ伊万里ちゃんはこれ混ぜてくれる?」
「わかった!」
伊万里ちゃんにクリームを混ぜて貰っている間に、生地を作ろう。「チャンでもできる!(かもしれない)ブッシュドノエルの作り方」を見ながら進めていく。オーブンの予熱も抜かりない。今日は強力な助手もいるのだ。伊万里ちゃんの料理の腕前は知らないけど、なんか大丈夫な気がする。
見た目も味も完璧なブッシュドノエルを敦くんにプレゼントして胃袋を掴み、そこから順調に敦くんとの距離を縮め結婚式でウェディングケーキを前に敦くんが「さんが作ってくれたケーキ美味しかったですよ」とか言われちゃって、結婚後に休日に二人できゃっきゃっしながら作ったりしちゃったりなんかして……。
「お姉ちゃん、それ緑色になってるよ」
いけない。敦くんとの未来に想いを馳せ過ぎていた。伊万里ちゃんの言葉に手元のボウルを覗けば、本当に緑色になっていた。なんで?
「なんで?」
「お姉ちゃんすごいね」
「私もこれはもうもしかして一周回って才能なんじゃないかと思ってきたわ……。あ、伊万里ちゃんクリーム出来た?」
「うん。どうかな?」
「えっ完璧……。中也のレシピ通りになってる。すごい。ありがとう」
「どういたしまして!」
「この生地は失敗だから新しく作りましょ。伊万里ちゃん混ぜてくれる?」
「いいよ!」
材料をレシピ通りに量って、レシピ通りの手順で混ぜていく。伊万里ちゃんは楽しそうに混ぜてくれた。
普段あまり伊万里ちゃんと話す機会は無いけれど、素直ないい子だ。あと「お姉ちゃん」って呼んでくれるのが可愛い。そういえば、昔太宰が「あの子が可愛くって堪らないのだよ」とか言っていたけど、わかる気がする。太宰と同意見なのは癪だけど。首領がエリスちゃんの為にどこからか拾って来たみたいな噂を聞いたときは、とうとう誘拐に手を染めたか……と思ったけれど、伊万里ちゃん本人は日々楽しいらしいので良いのかな。
そんなことを考えていたら混ぜ終わったらしい。「これでいいかな?」と云う声に、ボウルを確認すればそこにはレシピ通りになった生地があった。
「すごい!完璧。よしじゃあこれを型に流し込んで焼いていこう」
「はーい」
数十分後、焼き上がったであろう生地をオーブンから取り出すと、そこには紫色に変色したボコボコと音を立てる何か……ではなく、ちょっと焦げたけどきちんと焼けた生地があった。
「すごい……!すごい!できてる!」
「わあーおいしそうだね!」
「伊万里ちゃんのおかげだよぉ。お礼に半分あげるね」
「やったー!」
「次はクリームを塗って丸めて冷蔵庫で冷やす……。伊万里ちゃんくるくるしてみる?」
「うん、くるくるやる!お姉ちゃんも一緒にやろう」
「可愛いねぇ、伊万里ちゃん。よしじゃあクリームを塗って……一緒にくるくるしていこう!」
「くるくる〜」と伊万里ちゃんが呟くのを聞きながらくるくるした。あとは冷蔵庫で冷やすだけ。
冷やしている間、伊万里ちゃんは暇だからとお絵描きを始めた。エリスちゃんとのお絵描き対決のため、練習しているらしい。私も暇なので隣で見せて貰うことにした。
「伊万里ちゃん、それはもしかして太宰?」
「うん。太宰さんを描くときは足をうんと短く描けって中也さんが云ってた」
「中也は良いアドバイスをするわね」
「次はお姉ちゃん描いてあげるね」
「ありがとう。楽しみだわ」
今日のお礼に、伊万里ちゃんに今度たくさんの色が入った色鉛筆でも贈ろうかな。それとも新しいノートのほうが良いだろうか。どっちも贈ればいいか。
伊万里ちゃんが私の絵を描き終えた頃、冷蔵庫のケーキも良い感じになっているだろうと取り出して、半分に切ってそれぞれ好きなように飾り付けた。
「「完成〜!」」
やった、上手に出来たと伊万里ちゃんと手を叩き合って喜んだ。砂糖菓子のサンタがなぜか爆ぜたけどこれも予備を購っておいたので問題なし。伊万里ちゃんのほうも可愛く出来ていた。並べて写真を撮って中也に送った。私もやれば出来るのだという証明だ。殆ど伊万里ちゃんがやってくれたけど。後で「誰にやらせた?」と返信があったけど無視した。
「伊万里ちゃん本当にありがとう!私はこれを早速敦くんに渡してくる!」
「どういたしまして!伊万里も楽しかったー!」
こうして私たちの三分(じゃない)クッキングは有終の美を飾った。
「さん!!!!」
「あ、芥川くんだ。こんにちは」
「……何故貴様が此処に居る」
「お姉ちゃんのお手伝いしてたんだよー!あ、お姉ちゃんは出掛けちゃったよ」
「さん……何故僕にはケーキをくださらないのだ……何故人虎なんかに……」
「大丈夫?飴ちゃん食べる?」
「煩い要らぬ」
「じゃあケーキ食べる?お姉ちゃんと作ったんだよー!」
「……、……………………食う」
レッツ三分(じゃない)クッキング