彼女から、しばらく休暇を貰うという旨の手紙が届いたのは今朝のことだった。彼女が店を始めてから半年が経っていた。
 もうすぐ暑くなる。そうなれば、チョコレートは店に並べられないことは聞いていたから、きっと暑い時期に向けて何か準備でもあるのだろう、と勝手にそんなことを考えていた。
 彼女から仕入れたものはまだ残っているし、困ることもないだろうと、手紙に了承の旨と休暇を楽しんでと書いて返信した。

「それでよ、その店を襲ったんだよ!」
「はは! そりゃあいい!」
「シャイロック、これおかわり!」

 店は今日も繁盛していて、魔法使いたちが会話に花を咲かせていた。彼女は今頃休暇を楽しんでいるだろうか、と考える頭に、客たちの会話が入る。「はい」と返事をして、同じものを作って、魔法で彼の前に運ぶ。

「お待たせしました」
「お、ありがとう。ねえ、今日はあのチョコ無いの?」

 彼女のチョコレートは店では評判で、頼んでくる客が多くなった。「ありますよ」と返して、三つほど載せた小皿を浮かせる。別の客からも「俺も」「私も」と聞こえ、この調子だと今日明日には無くなってしまうなと考え、「今日はこれで終わりです」と声を上げた。不満の声も聞こえたが、仕入れ先が休業中だと言えば皆頷いてくれた。

「人間がやってる店なんだろ? ちょっと脅して奪っちまえば良いじゃねぇか」

 カウンターに座った客の一人がそんなことを言う。「そういうわけにはいきませんよ」と溜め息を吐くと、客の手から空のグラスを取り上げた。

「少々飲み過ぎでは?」
「はは。今日は気分良くてさあ」
「こいつ、菓子屋を一個潰したんだってさ」
「おや。それはまたどうして?」
「欲しかったもんが売り切れててさ、最初は作ってくれって頼んだんだけど、一人の客だけ贔屓出来ないって」
「それで、腹が立って夜中に店の中めちゃくちゃにしたらしい」

 全く、品性の欠片も無いなと思いながら、魔法使いに温厚な者なんていないことを思い出す。そういえば、彼女の両親は魔法使いに殺されたと言っていたけれど、詳しくは聞けなかった。休暇と言っていたけれど、彼女はどこに行っているのだろう。

「シャイロック、聞いてる?」

 客の一人にそう言われ、一度彼女のことは頭から消した。気が付くと彼女のことを考えてしまう自分に、些か驚きながら「ええ。聞いていますよ」と返す。今日も店は賑やかだ。