ミスター物騒、執着がすごい。


聞きましたよ、陸の男と恋人になったそうじゃありませんか。酷いですねぇ。アズールには教えて、どうして僕には教えてくださらなかったんですか。僕だって幼なじみじゃないですか。まぁ良いです。それで、どんな方なんですか。貴女が好きになるくらいだから、きっととても魅力的な方なんでしょう。ぜひ教えてください。年上。へえ。年上が好みだったんですね。いつもどんな話でも聞いてくれる。それはそれは。貴女たち付き合い始めてどのくらいですか。ほう、三ヶ月。きっと彼は年下の恋人が可愛くて可愛くて仕方ないんですねぇ。ですが今だけですよ。付き合い始めというのはそういうものです。恋人の何もかもが可愛くて仕方ない。もう数週間したら、きっと彼は貴女の話に適当に相槌を打つだけになりますよ、ええ。僕ならそんなことしませんよ。昔から、どんなにつまらない話だって聞いてあげたじゃないですか。好きなんですよ、貴女と話すの。いろんなことを話す貴女、稚魚みたいに可愛くて。馬鹿にしてませんよ。本心です。
そういえば、貴女今日いつもと雰囲気違いますね。そんな服持ってましたか。へえ、彼からのプレゼント。まぁ、悪くはないですが……。今すぐそのワンピースを引き裂きたくはなりますね。あぁ、これからデートなんですね。どちらへ行かれるんですか。そうですか、映画。何見るんです。ああ、今話題のラブロマンス。彼、趣味悪いですねぇ。貴女そういうの好きじゃないでしょう。恋人の好みも把握していないだなんて、彼、本当に貴女のこと好きなんですか。映画の後は食事に。そうですか。ほう、海辺のレストラン。良いですね。でも貴女、海を見たら帰りたくなるでしょう。以前は休みの度に帰っていたのに、最近はあまり帰らないから、何かあったのかとお母様から連絡があったんですよ。陸での生活を満喫しているから心配ないと伝えていたんですが、本当に満喫していましたね。僕もどうして急に帰らなくなったのか不思議でしたが、恋人が出来ればそれはそちらを優先しますよねぇ。あぁ、時々連絡取ってますよ。貴女、帰ったときあまり陸での生活のこと話さないらしいじゃないですか。あの子友達いるのかしら、って心配していましたよ。僕がいるので大丈夫です、と言ってあります。お母様もなら安心ね、と仰っていました。信用されてますね、僕。
ところで、彼、人間ですよね。貴女が人魚だって知ってるんですか。そうですか、まだ打ち明けていないと。ならちょうど良いじゃないですか。今日のデートを最後にしたらどうです。やっぱり、異種族間恋愛なんて無理ですよ。貴女が泡になったらと思うと涙が出ます。……は。泡になってもいいから好きなんですか。何馬鹿なこと言ってるんです。貴女、そんな人でしたか。どちらかといえば、一緒にいたければ海に引きずり込むような人じゃないですか。女性は恋をすると変わると耳にしたことはありましたが。まさか、本当だったなんて。お母様に陸の男に現を抜かしていてもしかしたら一生帰れないかもしれません、だなんてとても僕の口からは言えませんね。あぁ、どうしましょう。困りました。そうですね。とりあえず。
そいつ殺していいですか。