「ねえ〜、ムル〜」
自分で思っていたよりずっと甘えた声が出たな、と
は思った。
の声に、ムルは漁っていた宝石箱から顔を上げて「なに?」と首を傾げる。
「女の子になって」
先ほどよりもずっと甘えた声で、強請るように
は言った。
クロエに服を作って貰ったからそれを着て、髪は肩くらいまで伸ばして、リボンの髪飾りを着けて、あと可愛い靴も買ったからそれ履いて、キラキラのピアスがあるからそれも着けて、お願い聞いてくれるなら、その宝石箱から好きなもの持って行って良いから。
一息にそう言った
に、ムルはほんの少しだけ驚いて固まった。猫のように目をまんまるにしたムルは「
、すごい必死!」とケラケラ笑った。
「……だめ?」
は女が好きだ。花のような笑顔、柔らかい身体。人間でも魔法使いでも、気に入った女に近付いては自分好みに着飾るのが好きだった。ムルは男だけれど、
はムルの顔が好みだ。物凄く。だからこうして時々女に変身させて、ムルと遊ぶ。
「いいよ! その代わり、これ頂戴」
ムルが
の宝石箱から、ガーネットのブローチを取り出した。
は二つ返事で頷く。それは
がずっと昔に買った、結構良い値のするブローチだけれど、
にはそんなことどうでも良かった。ムルと遊ぶ時間以上に大切なものを、今のところ
は持っていない。ムルは「やった」と喜ぶと、
の座るベッドにダイブした。
「エアニュー・ランブル!」
丸みを帯びた胸、髪は
の注文通り肩くらい。ムルの身体が女へと変わっていく。少しだけ縮んだ背のおかげで、ムルは
と同じ目線になる。
は「可愛い」と微笑むと、呪文を唱えてクロエに作って貰った洋服をムルに着せた。キャミソールタイプの薄手のワンピース。裾にあしらわれたフリルが、ムルの少女のような可愛さを引き立てる。胸元は繊細なレースで、そこから下はチュール素材。ほんのりと透けるムルの肌が、
の劣情を誘う。でもまだ完璧じゃない。
は「はあ……」とうっとりした声を洩らしながら、もう一度呪文を唱えた。ムルの髪が一部、瞬時に編み込まれ、リボンで飾られる。ムルの耳からいつも着けているピアスが外れ、アメジストのピアスが輝く。
「完璧だわ。可愛い〜!」
「靴はいいの?」
「靴はやっぱり後で! ね、抱いていい?」
我慢できないとばかりに、
がムルの肩を押すとムルはベッドに倒れ込んだ。キャミソールの肩紐がズレて、二の腕に引っ掛かる。
はそれを撫でて「いいでしょ?」とうんと甘えた声を出した。
ムルは
の首に腕を回しながら「いいよ」と囁いた。
は抱かれるより抱きたい派で、女を快楽へと導くのが好きだ。ムルはそれをよく知っている。
ムルから許可を得た
は、ムルに口付ける。軽いキスを何度か繰り返して、
が「口開けて」とムルの唇を撫でた。
「ぁ、……んっ、……」
「ん、ふふ、可愛いね。……ん、ちゅ、んん」
「はぁ、……
、……」
「なあに」
「……、下、ムズムズする……」
がムルを抱くのは初めてじゃない。まだ両手の指で数えられる程だけれど、
は女の身体でもムルが感じられるように、着実に回数を重ねてきた。ゆっくり、少しずつ、けれど確実に、ムルの身体を開発してきたのだ。
深いキスだけで溶けたムルを見て、
はほくそ笑んだ。
「玩具使う?」
女同士でするとき、
はそういう類の玩具を使うこともあった。
の指より深いところまで可愛がれるし、指では与えられない快楽もある。前回は玩具を使ったな、と
はそれを仕舞っているサイドチェストに腕を伸ばした。ムルが「やだ」とその腕を掴む。
「
の指が良い」
の喉が上下に動いた。掴まれた腕をそっと外して、そのまま手を繋ぐ。
は、矢張り自分の調教は成功だった、と心中で祝福の花火を上げた。
「いいよ。入れるね」
「うん、……んっ、……あっ」
「ムルはここ好きだよね、この辺り」
「んっ、ん、っ、すきぃ……」
「あとこの辺の奥も」
「あっ……、っ……」
の手と繋がれたムルの手に、ぎゅうっと力が入る。
は「イッた? 気持ち良かった?」と手を解くと、ムルの頬を撫でた。
が魔法で編み込んだムルの髪はすっかり乱れて、リボンと一緒に散らばっている。肩で息をするムルを見下ろしながら、ムルの返事も待たずに、
は「もっと可愛い顔を見せて」とまた指を差し込んだ。
「あっ、ま、って」
「やぁだ。ね、もっと気持ち良くなって」
「ひぅ、……っ、あっ……あっ、ん」
「気持ち良い?」
「ん、っ、うん」
「ちゃんと言って。じゃないとイかせないよ」
「ふぁ、あっ……、きもち、い、っ」
「いい子」
「あっあっ、っ」
一度目の絶頂より大きく身体を跳ねさせたムルを見て、
は満足気に微笑んだ。
「可愛い、ムル。大好きよ」と
は囁く。ムルは呼吸を整えると「
も可愛いよ」と、
の腕を掴んで体勢を変えた。今度は
がベッドに押し倒される。
「俺も
が大好きだよ」
「だから、次は俺が気持ち良くしてあげるね」とムルは
に口付けた。ムルの伸びた髪が頬に当たって、
はそれが擽ったかったけれど、深い口付けにそんなことはどうでも良くなった。ムルと
のお遊びはまだ始まったばかりだ。
(宝石箱)