「ほ、ほんとうにするの……?」
ボタンが三つほど外されたところで、私は聞いた。彼はボタンを外す手を止めてから、はぁと溜め息をついて、ベッドへ腰かけた。怒らせただろうか。こわいわけではない。私は彼を好きだし、付き合ってから二年も経つ。そういうことをしたって何らおかしくはない。私は彼を受け入れられる。こわいわけでは、ない。
「ごめん……怒った?」
「いや」
「でも溜め息……」
「怒っているわけじゃない。君は……」
「なに」
「……いや、なんでもない」
そう言ってまたひとつ、溜め息。こわくなんてない。彼がどんな人かは知っているし、私なりに彼を受け入れてきた。これからだって、何があったって、受け入れられる。
「わたし、こわくないよ。こわくない、だから……」
脱ぎかけのブラウスのボタンに手をかける。こわくなんてない。ボタンを外す手が震えているのは気のせい。きっと寒いからだ。暖房の温度、もう少し上げておけばよかった。寒くて、うまく外せない。おかしいな。そっと私の手に彼の手が重なる。そのまま彼の手がボタンを留めていくのを見て、私は何をしているのだろうって自己嫌悪。私から誘ったのに。私が、いいよ、って言ったのに。
「、無理しなくていい」
「無理なんてしてない。ほんとにこわくないよ。だから、ねぇ、抱いて」
ボタンを留めていた手がぴたりと止まった。彼が私を見て、何か言いかけて、口を閉じる。そしてまた目がボタンへ戻る。ねえ、私、ほんとうにこわくないよ。どうしたら伝わるのだろう。
「、俺は、俺なりに君を大事にしてきたつもりだ」
「うん」
「これからだって大事にしたいし、傷つけたくない」
「うん」
「だから、君がこわくないと言おうと、手が震えているうちはできないな」
こわくない、と思っていたのに。彼に言われてしまうとそれが真実であると実感する。こわい。ほんとうは。だって他人と身体を重ねたことなどないのだから。初めて。私の初めては、全部、彼のもの。
誘うのは初めてじゃない。今までも、三回……二回くらいはあった。私が抱いてって言うと、彼はいつも「こわいならやめてもいい」と言ってくれた。その度に私は「こわくないよ」と言う。そうしたら彼が服に手をかけて、そこからいつも進めない。私がこわがったり、不安になったりするから。彼は優しいし、私を愛してくれている。でも時々足りなくなる。もっと愛してほしい。彼を身体で感じてみたい。愛されている、って、全身で、感じてみたい。そうやって私は盛りのついた動物のようになって、彼に抱いてって言うけれど、結局できないでいる。でも、今日は、ちがう。
「こわい。ほんとうは、こわいの。でも、私、征くんに抱かれたい。征くんのこと、身体で、感じてみたい。お願い、抱いて」
いつまでもこわがっていては、ちっとも進めやしない。
折角留めてくれたブラウスのボタンを、私は自分で外す。手が震える。大丈夫。
「……もう、やめてと言っても、聞けないよ」
彼が私の手をとって、そこに口づける。それから彼の手がボタンを外していく。ひとつひとつ、丁寧に。全部外されて、下着が露わになったころ、私は彼を見つめる。彼の瞳の中に、獣が見える。
ボタンが三つほど外されたところで、私は聞いた。彼はボタンを外す手を止めてから、はぁと溜め息をついて、ベッドへ腰かけた。怒らせただろうか。こわいわけではない。私は彼を好きだし、付き合ってから二年も経つ。そういうことをしたって何らおかしくはない。私は彼を受け入れられる。こわいわけでは、ない。
「ごめん……怒った?」
「いや」
「でも溜め息……」
「怒っているわけじゃない。君は……」
「なに」
「……いや、なんでもない」
そう言ってまたひとつ、溜め息。こわくなんてない。彼がどんな人かは知っているし、私なりに彼を受け入れてきた。これからだって、何があったって、受け入れられる。
「わたし、こわくないよ。こわくない、だから……」
脱ぎかけのブラウスのボタンに手をかける。こわくなんてない。ボタンを外す手が震えているのは気のせい。きっと寒いからだ。暖房の温度、もう少し上げておけばよかった。寒くて、うまく外せない。おかしいな。そっと私の手に彼の手が重なる。そのまま彼の手がボタンを留めていくのを見て、私は何をしているのだろうって自己嫌悪。私から誘ったのに。私が、いいよ、って言ったのに。
「、無理しなくていい」
「無理なんてしてない。ほんとにこわくないよ。だから、ねぇ、抱いて」
ボタンを留めていた手がぴたりと止まった。彼が私を見て、何か言いかけて、口を閉じる。そしてまた目がボタンへ戻る。ねえ、私、ほんとうにこわくないよ。どうしたら伝わるのだろう。
「、俺は、俺なりに君を大事にしてきたつもりだ」
「うん」
「これからだって大事にしたいし、傷つけたくない」
「うん」
「だから、君がこわくないと言おうと、手が震えているうちはできないな」
こわくない、と思っていたのに。彼に言われてしまうとそれが真実であると実感する。こわい。ほんとうは。だって他人と身体を重ねたことなどないのだから。初めて。私の初めては、全部、彼のもの。
誘うのは初めてじゃない。今までも、三回……二回くらいはあった。私が抱いてって言うと、彼はいつも「こわいならやめてもいい」と言ってくれた。その度に私は「こわくないよ」と言う。そうしたら彼が服に手をかけて、そこからいつも進めない。私がこわがったり、不安になったりするから。彼は優しいし、私を愛してくれている。でも時々足りなくなる。もっと愛してほしい。彼を身体で感じてみたい。愛されている、って、全身で、感じてみたい。そうやって私は盛りのついた動物のようになって、彼に抱いてって言うけれど、結局できないでいる。でも、今日は、ちがう。
「こわい。ほんとうは、こわいの。でも、私、征くんに抱かれたい。征くんのこと、身体で、感じてみたい。お願い、抱いて」
いつまでもこわがっていては、ちっとも進めやしない。
折角留めてくれたブラウスのボタンを、私は自分で外す。手が震える。大丈夫。
「……もう、やめてと言っても、聞けないよ」
彼が私の手をとって、そこに口づける。それから彼の手がボタンを外していく。ひとつひとつ、丁寧に。全部外されて、下着が露わになったころ、私は彼を見つめる。彼の瞳の中に、獣が見える。
あなたに捧げるヘスティア