恋人という存在はが初めてだった。が恋人になる前には、別の女性から告白されたこともあるし、お見合いをしたこともある。けれどその度に断り、粗相のないように愛想笑いを繰り返し、赤司の名に傷がつかないようにしてきた。は、愛想笑いのいらない、数少ない人間だった。が俺を好きになるのも、俺がを好きになるのも、時間はかからなかった。
 が恋人になってから二年が経つ。俺からを求めたことはない。しかしから「抱いて」と言われることはあった。その度に胸は高鳴り、やっとこの手で抱けるのだという喜びが全身を駆け巡った。俺だって一人の男だ。好きな女性を抱きたいと思うのは普通のこと。からお願いされる度、の服に手をかけた。そこでいつも気づく。が震えていることに。「こわくない」は言うが、嘘くらいわかる。ずっと見てきたのだから。脱がせかけた服を着せて、終わり。でも今日は違った。

「こわい。ほんとうは、こわいの。でも、私、征くんに抱かれたい。征くんのこと、身体で、感じてみたい。お願い、抱いて」

 震える身体で、俺を求めるを見て、いつも以上に胸が高鳴るのを感じた。「……もう、やめてと言っても、聞けないよ」の手に口づけて、ブラウスのボタンに手をかけた。は、俺の中に潜む獣に、気が付いているだろうか。



「あっ、あぁっ……っ」
「痛くないか?」
「だ、いじょ、ぶ、んっ、あっ……」

 最初は指を一本入れた。かわいい声をあげるに、気分が高揚する。ゆっくり動かしながら、反応を見る。大丈夫。痛がってはいない。

「ひっ、あっ……そこ……やっ」
「ここ?」
「やっ、あっ、ん、変に、なる、」
「一度イっておこうか」
「あぁっ」

 指をすこしはやく動かせば、は絶頂を迎えた。とろんとした目、肩で息をする。もっと見たい。もっと、乱れさせたい。、入れるよ」まだ誰も受け入れたことのないそこに、自身を入れる。やっと。やっとこの手でを抱ける。

「あっ、ああっ」
「すこし……、きついな」
「ひっ、ん、あっ、せ、いくんっ」
「なに」
「て、手、繋いで……あっ、やっ」

 の指に自分の指を絡める。これだけでひどく満たされるのはなぜだろう。求められることが、こんなに幸せだということを、俺はに会うまで知らなかった。

、っ……、……好きだっ……愛しているよ」
「わ、たしも、すき、だいすきっ」

 喘ぐと見つめ合って、二人同時に絶頂を迎えた。は初めてのことに恐怖や不安があった。緊張もしていたのだろう。そのまま眠ってしまった。大事にしたい。傷つけたくない。俺の大切な恋人。壊してしまいたい。本能のままに抱いてしまいたい。俺の中の獣は眠ることを知らない。寝ているを、もう一度……。それを理性で抑えつけて、眠るを見る。俺を、求めてほしい。ずっと、これからも、俺だけを。。俺だけの、

ぼくが奪ったアルテミス