年末年始のえろ練習のためのお題箱「キャラ指定なし、お風呂」


「ねえ、ちゃん。私達最近マンネリだと思うのだよ」

は夕飯を作る手を止めることなく溜息を吐いた。あの男また何か云ってるよと思い乍ら、は太宰の言葉を無視した。

「お互いにお仕事も忙しくて、すれ違いが多かったと思わないかい?」
「ご飯出来たので卓の上片付けてください」
「わあ、美味しそう。こうして一緒に夕飯を食べられるのも随分と久し振りじゃあないか」
「いただきます。あ、お味噌汁ちょっと薄いかもしれません」
「いただきます。会話はあっても、いってきますだとかおかえりなさいだとか、そういうのばかりであんまり言葉も交わしていないだろう。いや、ちゃんにおかえりなさいって云って貰えるのはちゃんが私の奥さんになったようで大変嬉しいのだけどね。お味噌汁丁度良いよ」

「それなら良かった」と、お味噌汁に関してだけ言葉を返したは食事を進めていく。黙々と食べるの横で、太宰は尚話を続けた。

「しかしもうお互い落ち着いた訳だし、明日は私もちゃんもお休み。最近ちゃんと触れ合えなくて私はすごぅく寂しかったのだよ」

「だから今日は一緒にお風呂に入らない?」と笑みを浮かべた太宰に、は茶碗を置いて溜息を一つ。は食事は静かに摂りたい派だった。しかし太宰と恋人の時点で、そんなの夢のまた夢である。

「五月蝿いですよ、太宰さん」


***


は、太宰がマンネリだと云ったときから、何となく厭な予感がしている。厭な予感ほど中る、とは誰が云ったのか。はそんなことを考え乍ら服を脱いでいく。先に風呂に入った太宰に「ちゃん、まだぁー?」と声を掛けられたが、は羞恥と戦っていたので無視した。
互いの裸なんて見慣れているし、性行為だって何度もしている。今更恥ずかしがる必要なんてない、は判っているけれど、恥ずかしいものは恥ずかしいし、太宰と一緒にお風呂に入るのは初めてだ。初めて、というのは何であれ緊張してしまうものだ。

「もー、遅いよ。その下着可愛いね」

「私の好み」と浴室から顔を出した太宰に、は手近にあった洗濯洗剤の容器を投げつけた。しかし太宰はそんなの行動予測済み。難なく容器を掴んだ太宰は、それを元の場所に戻した。

「恥ずかしがるちゃんは可愛いけれどね、待ち草臥れちゃった」
「ちょっ、自分で脱げますから!」
「ええ……。先刻もそう云ってたじゃないか」

あとは下着だけ、下着だけ脱げばお風呂に入れる。しかしはそのあともう少しを躊躇っていた。そんなの躊躇いに、太宰が気付かない筈がなく、太宰はあっという間にの下着を脱がした。パチン、とホックの外れた音に、はそのあまりの手癖の良さ……どちらかと云えば悪さに、若干引いた。

「いつまでもそうしていたら身体が冷えてしまうよ」

優しい声でそう云われて、は覚悟を決めた。太宰は女の扱いが非常に上手い。
太宰に「洗いっこしようよ」と云われたは、また洗濯洗剤の容器を投げつけそうになった。その手を太宰に取られ、そのまま浴室まで引っ張られたのでそれは叶わなかったけれど。流石に本当に恥ずかしい、とは洗いっこは丁重にお断りした。
躰を自分で洗い終えたは、太宰が待つ浴槽にゆっくり浸かった。離れたところに座ったを見て、太宰は「こっちにおいで」との腕を引いた。太宰の胸に頭を預けるように、太宰の足の間に座ったは耳まで赤くなっていた。

ちゃん、本当に可愛いね」
「……揶揄わないでください」
「そんな心算ないのだけど。本当に可愛いと思ったから云ったのだよ」
「あの……、太宰さん……」
「うん? なあに?」
「その……、あたってます……」

俯いて、か細い声でそう云ったの耳元に、太宰は口を寄せて囁く。「ちゃんがあんまり可愛いから興奮しちゃった」と。次いで「今日、このまましようよ」と云われ、は首だけで太宰を振り返った。

「こ、此処で?!」
「うん。駄目? 偶にはいつもと違うことをするのも良いと思うのだけど」
「や、やだ……」
「如何して?」
「だって、……此処……、明るいし……」
「そんなのすぐに忘れさせてあげる」

矢張り、厭な予感ほど中るのだとは思った。


***


「あっ、……ん、……あ、あ、っ……」
「ん、ちゃん、腰もう少し、上げられる、……?」
「やっ、むり……、ひゃっ、」

は太宰に背を向けて、濡れて滑る浴槽の淵を何とか掴んでいた。それだけで精一杯なのに、太宰の要求に応えられる筈もなく、は首を横に振る。浴室内ではの声がいつもより響いていた。

ちゃん、若しかしてこの体勢好き?」

「いつもより締め付けが凄いね」と太宰は腰を動かし乍らに問う。太宰が動く度に浴槽に張られた湯が音を立てて二人の躰にあたる。熱いお湯の中での行為は、の頭をいつも以上にぐちゃぐちゃにした。外も中も熱くて、はどうにかなってしまいそうだった。

「あっ、……わかんな、……っ、…っ」
「ふふ、可愛いね。……、ちょっとごめんね」

が絶頂を迎えたのを確認した太宰は、の躰を持ち上げて、体勢を変えた。浴槽の淵に腰掛けて、向かい合うように太宰に躰を向けたは、「やっ、やだぁ」と顔を隠そうとした。太宰はそれを宥めるように「大丈夫、大丈夫。私の首に腕回して」と囁いた。はぼうっとする頭で、何とか太宰の言葉を理解して、太宰の首に腕を回した。

「そうそう、いい子。ちゃんと掴まっててね」

「落ちたら危ないから」と云った太宰は、止めていた動きを再開した。

「あっ、……や、あついっ、……あっ、ん、ああっ」
「……っ、はぁ。……うん、あついね。ちゃんの中、いつもよりずうっとあたたかくて気持ちいいよ」

うっそりとした声で云う太宰の言葉は、逆上せて気絶してしまったには届かなかった。
(agitation)