1−4 さいしょ?
本を握り締めていた。ワタシの字が潰れている。テーブルの上には行儀よくナイフとフォークが並べられていた。皿の上にはなにもない。空っぽだった。部屋をぐるりと見回す。誰もいない。誰の呼吸も聞こえない。はずだった。
「脳が機能しなくなれば、それは死と言えるだろうか」
向かいの椅子にムルが座っていた。組んだ両手をテーブルに置いている。ムルを照らしているのは蝋燭の灯りだけ。ワタシは答えた。「いいえ」。ムルが笑う。「ではきみは何を明確な死と考える?」、わからない。いつも、わたしはわからない。
「考えて。俺は考える人の顔が好きだよ」
灯りが消える。暗転。最初に戻る。
最初って、いつ? わからない。