1−5 ママ?
「何がわからないの?」
窓から差し込む光を遮るように、ムルがわたしの顔を覗き込んでいた。わたしは首を傾げながら起き上がる。「わたし、何か言ってた?」と訊けば、ムルは「、ずーっとわからないって言ってた!」と楽しそうに宙に浮く。わからない。何が? なに、が、わからないのだろう。
「はわからないフリをしているだけなのに!」
ムルが笑いながら宙を三回転。わたしが口を開くより先に、ムルが着地して、笑顔のまま「お昼ごはん食べる?」と言った。わたしがそれに頷くと、ムルはわたしの手首を引っ張る。じゃあはやく食べよう、と急かすみたいにい。二人でリビングに向かう。
オムレツ、チーズ入り。パン。紅茶。完璧な昼食だった。完璧な、私が求めている、欠点のない、あれ、わたし、なんで。
「……ねえ、ムル?」
「なに? 冷めちゃうよ」
「オムレツ、チーズ入ってる?」
「入ってるよ! なんでわかったの?」
「俺言ってないのに」とムルが笑った。チーズ入りのオムレツは、わたしの好きなものだ。でもラクレットは違う。ラクレット、何でラクレット? わからない。でも、違う。ラクレットは。
「ねえ、ムル」
「なに? 食べないの?」
「ママはどこ?」
ラクレットは、私の好物だ。