3−1  おもいで?
 ナイフとフォークを握り締めていた。目の前の皿にはパープルサファイアが一つ、盛られている。フォークを刺す。刺さった。ナイフで半分に切る。輝くそれを、ワタシは自分の口へ運んだ。噛み砕く。味はしない。

「きみが目を開けたとき、彼女はとても喜んでいた」

 長いテーブルの先で、ムルがそう言った。蝋燭の灯りだけが私たちを照らしている。そういえば、母がわたしの誕生日だと言う日に、ケーキに蝋燭を立てたっけ。あのケーキ、何の味もしなかったなぁ。

「思い出の味はどう?」

 ムルが首を傾げながら微笑んだ。思い出の味、は、「何の味もしない」。ムルはほんの少しだけ目を開くと、宙を見てから、「あぁ」と一人で納得した。

「彼女、きみに味を教えなかったんだ」